「こころの音」
それからは、学校から帰ってきても、母親は居たし、おやつも用意してくれていて、宿題をやりながら食べた。
「お母さ〜ん、今日の夕飯何〜?」
「ゆうこの好きなハンバーグだよ〜」
「やったぁ〜!!」

そんな会話もはずみながら、毎日過ぎていった。

休みの日には、三人で車で山に行ったり、近くに大きな公園があって、そこに散歩に出掛けたり…

その大きな公園に、れんげ畑があった…夕陽があたって、ゆうこが今まで見た中で、最も美しい光景だった……

「きれいだね〜」
「本当だね〜」
「まだ見てた~い」

夕暮れが夜にかわる少し前まで、ゆうこは眺めていた。
このれんげはもちろん、とってもきれい…でも三人で眺めていることに意味があるんだ。と、ゆうこは幸せな気持ちを、胸いっぱいに感じていた。


でも、そんな幸せな生活は続かなかった…


いつものように学校から帰ってくると、あの異様な匂いがした……

不安が胸をよぎる

三畳間に母親は居ない…

おそるおそる六畳間にいってみると……

全裸で母親はころがっていた……


「何、これ何なの……」


あまりのショックで、涙が止まらない……
情けない母親の姿…胸が苦しい…張り裂けそうだった……
ゆうこはコタツに座り、顔をうずめ、しばらくはじっとしていた。


こころの奥のところで聞いた事のない音が鳴った……



その頃から、父親はギャンブルにはまりだし、いつも家にはお金はなかったし、母親も起き上がれないほど、いつもお酒を飲んでいた。

「どうしてこの家に産まれたのかなぁ…」
布団にもぐっていたゆうこは真剣につぶやいた…

ゆうこはあまり笑わなくなった……
だけど、学校ではいつも普通にふるまった。
友達に悟られたくなかった。

友達は本当にやさしかったし、楽しかったし、まさちゃんはお姉さんみたいな子で、いつも居心地が良かった。

「ゆうちゃん、なんか疲れてるみたいで元気ないよ、大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ!」

いつも暖かい言葉……
心からうれしい。


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