超人戦争
 各地より人類が召集(しょうしゅう)され、天使より軍船が付与(ふよ)された。南極海を挟んでアメリカ、オーストラリア、アフリカ、ニュージーランドに、サタンの予測通り神軍が配陣(はいじん)され、攻撃の天命を待持(たいじ)している。
 実際の指揮は総司令官ゼウスが執(と)り、神は大元帥(げんすい)として神居(しんきょ)に鎮(ちん)座(ざ)している。南極軍は大宇宙に孤立していた。交戦の運気が、切迫(せっぱく)している。

 南極の短い夏(か)節(せつ)の照りの下、神軍が四方より一斉闘撃(とうげき)を仕掛けたのは、太陽暦に直せば一月の下旬だった。
 天使を将校とし、人を軍兵(ぐんぴょう)として、怒涛(どとう)の勢いで神軍が南極海を侵攻(しんこう)してくる。サタンは敵水軍を、上空から攻勢(こうせい)するよう下命していた。
 超人兵は、武器や輸送手段を持たない。躯体(くたい)自体が武具(ぶぐ)であり、それ以外に頼るものは、サタン、デーモン、ゼノンの頭脳のみである。
 両軍の激突は、現時(げんじ)ドレーク海峡と命名されている水域に於(お)いてであった。ゲルス第一軍司令官率いる超人軍が、天使デス麾下(きか)の船団を急襲したのである。
 神軍艦隊は天使から教示(きょうじ)された鉄製の矢と剣、天使の偉力(いりょく)で、超人軍の超兵器に対抗した。
 サタンはビクトリアランドの大本営に在って、戦況報告を逐一受けている。前線からの通報によれば、ゲルス軍はデス軍の艦船(かんせん)を次々と海中に葬(ほうむ)っているらしい。デス軍の抵抗も凄絶(せいぜつ)で、夜戦となっている模様(もよう)だった。
 この初戦は如何(いか)なる犠牲(ぎせい)を払ってでも、勝利せねばならない。サタンは常時出動可能な直轄(ちょっかつ)軍を、掌握(しょうあく)している。戦況次第で、ドレーク海峡に即刻(そっこく)出撃(しゅつげき)する気であった。
 
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