超人戦争
 翌日になると、ニュージーランド沖で海戦が勃発(ぼっぱつ)した。サタンはゲルスに、
「今日中に、敵を撃破(げきは)せよ」
 と厳命(げんめい)し、デーモンを派遣(はけん)したのである。
 デーモンの助力を得たゲルス軍は一大奮起(ふんき)し、この日ドレーク海峡を制圧(せいあつ)して、デス軍を南米に押し返したのだった。
 ドレーク海峡戦戦勝の戦報に超人軍の気勢(きせい)は沸騰(ふっとう)し、第三軍は一日で、神軍を敗走(はいそう)させたのである。
 次いでオーストラリア、アフリカ方面で両軍が衝突した。オーストラリア沖では激戦となったが、ゲルス軍の一部をデーモンが指南(しなん)して援軍に駆けつけ、撃退できたのだった。
 緒戦(しょせん)に於ける完勝(かんしょう)に、超人軍は自信を得た。大陸は戦果(せんか)に沸いた。そして人間の屍骸(しがい)や捕虜(ほりょ)は、超人の食糧(しょくりょう)として大切に保管(ほかん)されたのだった。
 然(しか)しながら、喜悦(きえつ)してばかりはいられなかった。神軍は当然体制を整備し、総攻撃をしてくるだろう。超人軍の大勝(たいしょう)は、人間主体の船隊への空中からのアタックが有利だったことに起因(きいん)している。海軍に対する空軍の優越(ゆうえつ)が、勝敗を決したのだ。
 人間中心の攻戦(こうせん)が通用しない、と判明した今後は、神軍の戦術(せんじゅつ)は、天使が主体となろう。そうなれば、今回みたいにいくかどうかは不明である。
 サタンは勝鬨(かちどき)に満ちている全軍に、
「真の勝利を掴むまで、油断(ゆだん)は禁物(きんもつ)である」
 と告文(こくぶん)し、士気(しき)を引き締めたのだった。

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