超人戦争
悲運の将来しかないデーモンと、ビーナスが相愛(そうあい)できる筈が無かった。デーモンの求愛に応じれば、ビーナスもデーモンと同じ道程(どうてい)を歩まねばならない。ビーナスには堪(た)え難い結末であった。ビーナスは断固として、デーモンの恋慕(れんぼ)を撥(は)ね付け続けた。
二月末の星(せい)月夜(げつや)、デーモンは捕虜収容所の門を潜った。此処(ここ)には天使しか収容されていない。人間は片っ端から畜産市場に輸送され、其処から食肉工場へと直送されていくのだ。
神軍は人間兵を超人が家畜扱いしている現状への対抗措置として、超人兵の慮兵を皆殺しにしていた。この戦争は戦闘に敗れれば死、という悲惨なバトルなのだ。
超人兵士の間には、
「捕虜天使に対する処遇(しょぐう)が、丁寧過ぎる」
と不満が蔓延(まんえん)しつつある。不平の急先鋒は、最前線の雑兵だった。精兵(せいへい)は仲間が神軍によって如何(いか)に残虐(ざんぎゃく)に殺戮(さつりく)されているか、を悉知(しっち)している。殆(ほとん)どの超人囚兵(しゅうへい)は、焼殺(しょうさつ)されている。 それが最も効果的で、経費も要らない手法だったからだ。
超人の巷間(こうかん)では、
「俘囚(ふしゅう)となった天使を、肉片(にくへん)の刑に処すべきだ」
と強硬に唱える者が多数を占めている。その世論を、ゼノンもサタンもデーモンも、押さえ切れなくなってきていたのである。
デーモンにとって、ビーナスが肉(にく)塊(かい)になってしまうなど、我慢できない。デーモンは、
「天使処刑法」
が承認される前にビーナスを転向(てんこう)させ、夫婦となって一緒に暮らしたかった。
デーモンは今夜ビーナスを救出すべく、並々ならぬ覚悟で、収容所を来訪したのである。
ビーナスが押込められている独房(どくぼう)を開扉(かいび)すると、デーモンは衛兵(えいへい)に、
「呼ぶまで外で待機せよ」
と下命し、頑丈な戸を閉じた。
「此処の暮しはどうだい?」
二月末の星(せい)月夜(げつや)、デーモンは捕虜収容所の門を潜った。此処(ここ)には天使しか収容されていない。人間は片っ端から畜産市場に輸送され、其処から食肉工場へと直送されていくのだ。
神軍は人間兵を超人が家畜扱いしている現状への対抗措置として、超人兵の慮兵を皆殺しにしていた。この戦争は戦闘に敗れれば死、という悲惨なバトルなのだ。
超人兵士の間には、
「捕虜天使に対する処遇(しょぐう)が、丁寧過ぎる」
と不満が蔓延(まんえん)しつつある。不平の急先鋒は、最前線の雑兵だった。精兵(せいへい)は仲間が神軍によって如何(いか)に残虐(ざんぎゃく)に殺戮(さつりく)されているか、を悉知(しっち)している。殆(ほとん)どの超人囚兵(しゅうへい)は、焼殺(しょうさつ)されている。 それが最も効果的で、経費も要らない手法だったからだ。
超人の巷間(こうかん)では、
「俘囚(ふしゅう)となった天使を、肉片(にくへん)の刑に処すべきだ」
と強硬に唱える者が多数を占めている。その世論を、ゼノンもサタンもデーモンも、押さえ切れなくなってきていたのである。
デーモンにとって、ビーナスが肉(にく)塊(かい)になってしまうなど、我慢できない。デーモンは、
「天使処刑法」
が承認される前にビーナスを転向(てんこう)させ、夫婦となって一緒に暮らしたかった。
デーモンは今夜ビーナスを救出すべく、並々ならぬ覚悟で、収容所を来訪したのである。
ビーナスが押込められている独房(どくぼう)を開扉(かいび)すると、デーモンは衛兵(えいへい)に、
「呼ぶまで外で待機せよ」
と下命し、頑丈な戸を閉じた。
「此処の暮しはどうだい?」