死霊むせび泣く声
 俺は歩いてすぐの場所にある、街でも一番安い定食屋へと入っていった。


「いらっしゃいませ」


 若い店員が声を掛けてきたので、俺がメニューを指差し、


「この朝定一つ」


 と言った。


「かしこまりました」


 店員がそう返し、店奥の厨房へと入っていく。


 俺は差し出された冷たいお茶を啜りながら、夏ももうすぐ終わりであることを感じ取る。


 今年の夏は暑かった。


 俺もさすがに六月終わりから、酷暑に悩まされるのを感じていたのだ。


 だが、夏が終われば涼しい秋が来る。


 俺は届けられた定食を近くに置いてあった割り箸を使って食べ始めた。


 ゆっくりしている暇はない。
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