死霊むせび泣く声
 ただ俺はそれから何か赤いものを見るたびに、脳に瞬間的に血のイメージが湧いてしまい、どうしようもなかったのだ。


 俺自身、夏場の疲れがまだ溜まって残っていると思う。


 それがたまたま運悪く、自宅マンションに付いた曰くや、それに纏わる霊の降臨へと繋がっていた。


 タイミングが悪かったのだ。


 俺はあの岡村という不動産会社の社員に、本気で文句を言ってやろうと思った。


 だが、一度付いた曰くは簡単には離れないと思われる。


 大規模な除霊が必要だろうと考えられた。


 マンション全室の人間を集めて。


 マンション内のトイレで人が首吊り自殺したとなると、極度のノイローゼが原因だったとはいっても、やはり問題なのだった。


 俺も里夏もその手のことに関して、あまり詳しい話をしない。


 今、その話をしたところで、根本的な解決になるとは到底思えないからだ。

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