死霊むせび泣く声
 それに俺は生半可(なまはんか)な除霊よりも、返ってあのマンションを取り壊してもらって、平地にしてしまった方がいいような気すらしていた。


 つまり住人全員が立ち退くということである。


 もし、何かがあった場合に備えて、国土交通省の人間などに取り壊し工事に立ち会ってもらうことも視野に入れていいようだった。


 要は俺も他の住人も、そして俺の悩みに悩まされ続ける里夏も、それで納得が行くようならいいと思う。


 つまらないことばかりに足を引っ張られたくはなかったからだ。


 これから先、俺と里夏の付き合いは続くのだし、いずれは一緒になりたいと思っている。


 そう思えるからこそ、最低限でも住居の安全ぐらいは確保したかった。


 落ち着いて暮らせるように随時手を打つつもりだ。


 デザートを食べ終わり、付いていたアイスコーヒーを飲む。


 俺も里夏も砂糖やミルクを入れずにブラックで飲みながら、ふっと野外に目を向けた。


 カツカツ……。

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