死霊むせび泣く声
 と訊いてきた。


「ああ。まあ、疲れてるなんて、上司の前じゃ言えないけどな」


「でも、あたし、和義が仕事で無理してるの、知ってるから」


「俺が?」


「ええ。いくら企画部で企画書ばかり打つって言ったって、限界があるでしょ?」


「まあな。俺も合間に休憩してるけどね」


 俺はサラリーマンという職業がどれだけきついか、知っている。


 ウイークデーは欠かさず出勤して、朝の九時から夜は残業までこなし、午後八時過ぎに自宅マンションに帰り着く。
 

 もうすぐ関東地方も梅雨入りするので、またジメジメとした空気が辺りに漂う。


 そんな季節は怪談が面白いのだった。


 俺は怖い話が結構好きなのだ。


 いくら都市伝説や怪奇譚を否定していても、ホラー小説やホラー映画などは読んだり、見たりする。
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