死霊むせび泣く声
 里夏が、


「和義って考えすぎ。いつもは冷静なのに、何で今夜だけそんなに震えてるの?」


 と訊く。


「だって、あの遠くから聞こえてくる鎧や甲冑の音は紛れもなく霊のものだろ?」


「そんなの関係ないわよ。それにいずれ引っ越すんでしょ?ほんのそこら辺りの数日間ぐらい、乗り切れるわよ」


「俺は今夜あの今村武蔵介と綾田伊予丞が殺しに来ると思う。あの血の付いた刀で、俺や君をばっさりと」


「そんなこと考えてたらキリがないわよ。さっさと行きましょ」


 里夏がドライにそう言って歩いていく。


 俺も何とか付いていった。


 そしてマンションに着き、ガタガタと震えながら、キーホールにキーを差し込む。


 開錠して、中を覗き見た。


 誰もいない。
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