死霊むせび泣く声
 そして俺はそれに気付く羽目になる。


 不動産屋が顧客である俺に対し、安く貸した理由が何か、分かりつつあって……。


 スースースーというむせび声がトイレの方から聞こえてきたのは、俺がリビングでパソコンに向かっているときだった。


「やっぱし、何かおかしいわよ」


 里夏がそう言って、またあの怯えた目をする。


 俺が、


「気にするなよ。どうせ聞き間違いなんだから」


 と言った。


 俺は明らかにウソをついていた。


 自分自身に対しても。


 俺も正直なところ、怯えていたのだから……。


 スースースーという啜り泣きの声が聞こえてきて、俺たちを脅(おびや)かす。

< 17 / 155 >

この作品をシェア

pagetop