死霊むせび泣く声
 そう思っているうちに、俺はぐいぐいと足を引っ張られ、苦しみ出す。


 気持ちとは裏腹に、俺自身、右足首だけでなく、左足首まで泥濘(ぬかるみ)のようなものに捕われ始めた。


「う、うっ……」


 俺が呻(うめ)くと、近くにいた男性が、


「どうかしたんですか?」


 と訊いてきた。


「足引っ張られちゃって」


「足……ですか?」


「ええ。ここなんですけど」


 俺がそう言って足首に手をやると、何かが巻き付いていた。


 それが実は武者の切られた手首だと分かったのは、俺が足を持ち上げてからだった。


「わっ、何これ?」

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