死霊むせび泣く声
 俺が違和感を覚え、その切られた手首を放り投げると、落下点で鎧(よろい)を着た下半身のない武者の霊が現れる。


 俺は一瞬凍り付いた。


 海の水の冷感とは裏腹に。


 俺は、


「失礼します」


 と男性に言うと、一目散にビーチへと舞い戻る。


 ビーチは雨が上がった後なので、砂が焼け出していた。


 俺は里夏のところに駆け寄り、


「今、俺、足首に武者の切られた手が巻き付いてたんだ」


 と言う。


「何言ってんの?冷静になってよ」


 彼女はあくまで平常心なのだった。
 
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