死霊むせび泣く声
「君、夏休み取れるのかい?」


 ――ええ。週末は普通に休みだし。


「じゃあ、七月の中頃ぐらいの梅雨が明けたときがいいね」


 ――分かった。予定空けとくから。


「いつもごめんな」


 ――いいわよ。和義はあたしの愛する人だし。


「ありがとう」


 俺たちは電話越しに話が弾んで、それから二十分ぐらい、バッテリーが切れる寸前まで話をしていた。


 互いに話が終わり、俺が電話を切ると、風呂場の方からまたスースーという音が聞こえてくる。


 今度は刀のようなものを研(と)いでいる音だ。
 

 俺は昔の武者を想像し、正直怖かった。


 息を殺して、バスルームへと向かう。
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