死霊むせび泣く声
 俺は秘書課にいる里夏が羨ましかった。


 広報というのは社の顔だからである。


 彼女たちが表の顔なら、俺たち企画部の人間たちは裏方だ。


 俺は出勤すれば、企画書を作る作業で一日が終わってしまう。


 物足りないと言えば物足りないのだった。


 だが、これがサラリーマンの現実だ。


 上下ともワイシャツ姿で会社に行き、毎日同じことを繰り返すのが……。


 そして俺はまた休み明けに出勤した。


 その日の朝、午前八時前に起き出して、洗面台で歯を磨いていると、突如聞こえてくる。


 それは例の啜り泣きの声だった。


 朝から俺は恐怖感を味わうことになる。


 ふっと振り返ると、武者の霊がこっちを睨み付けていたのだから……。


 慌てて目を逸らし、水道の蛇口を捻ると、今度は真っ赤な血がドロドロと流れ出してき
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