死霊むせび泣く声
「相手するなよ。霊なんてこんな二十一世紀って時代にあるわけないんだし」


 高村がそう言って笑った。


 そういえば高村も学生時代に夏場、東北の山村まで肝試しに行って、水子地蔵を蹴り飛ばしたとか言っていたのを思い出す。


 磯野も霊などにはまるで無関心で、むしろ楽しんでいるようだった。


 俺も高村や磯野などと同じで、心霊など信じることはない。


 ホラー小説やホラービデオなどは未だに読んだり、見たりするのだが、そういった霊の存在を信じ込むことはまずなかった。


 だから家に帰っても、水や塩などを供えることはまず考えなかったし、小津原から高額の除霊の費用を取られたことを詐欺のようにすら感じていたのが本音だ。


 俺は本気で霊の類を信じることはまずなかったし、そうすることももうないだろうと思われた。


 完全にウオッチャーの方に回ってしまったのだ。


 自分に降りかかってくる心霊現象を笑い飛ばすという方に。


 そして俺はその日、遅くまで残業して、午後九時過ぎに家に帰り着いた。
< 81 / 155 >

この作品をシェア

pagetop