死霊むせび泣く声
 と口々に言う。


「腹いっぱいになったし、午後からも仕事あるから、あんまりゆっくり出来ないんだよ」


 俺がそう言い、店員が立っているレジへと向かう。


 高村たちは黙って付いてきた。


 三人でそれぞれ食事代を出し、俺は真っ先に店を出る。


 五百円でお昼が食べられるのだから、この街はいいのだ。


 関東でも東側に位置する県で、大概街の勝手が分かるのでいい。


 俺は冷房が利いていた店から抜け、外の熱気を味わった。


 高村と磯野も俺の後を追うようにして歩いてくる。


 さっきトイレで見た武者の霊はおそらく今村武蔵介と綾田伊予丞のそれだと思われた。


 一番いいのは再度の除霊か、水と塩を供え続ける供養、それにあと一つ選択肢があるとすれば、今のマンションを出ていくことだ。


 俺はさすがに不動産屋から曰くつき物件を掴まされたことを正直なところ悔いていた。
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