引っ込み思案な恋心。-1st
気付くと、私の頭の真上にあかねちゃんと映美佳がいた。
「ほらほら。頭、気を付けて」
映美佳がそう言いながら、手を差し出してくれた。
私は映美佳のあたたかい右手を握った。
「お疲れ〜、柚!ほら、山の方見て!」
映美佳に引っ張られて、私は映美佳とあかねちゃんの間に座った。
あかねちゃんの指さす方を見ると、真っ赤な太陽が山に隠れる直前だった。
「うわぁ〜。綺麗な夕焼け」
私がつぶやくと、あかねちゃんは嬉しそうに私の肩に手を置いてきた。
「でしょでしょ〜?サイコーの風景!」
すると、映美佳も私に向かって穏やかな笑顔を見せてきた。
「なんかさ、3人で小学校に忍び込んでジャングルジムの上で夕焼けを見るとかさぁ、青春って感じだよね」
「あっ、いいねぇー」
そんな映美佳の話に乗ってきたのは、あかねちゃん。
「これ、絶対夏休みの思い出として残るよねー。目に焼き付けとこー」
嬉しそうに笑いながら、あかねちゃんは真っ赤に染まる空を眺めた。
私もそっと、赤い太陽を見た。
…私はこんな体験、初めてだった。
映美佳は『青春』って言ったけど、こうして3人で並んで夕焼けを見ること自体、私にはないことだと思っていた。
嬉しくて
楽しくて
けど、少しだけ恥ずかしくて。
そんな気持ちを噛み締めながら、私は今、この瞬間を大切に過ごした。