引っ込み思案な恋心。-1st
「……だいたい想像はつくけどさ、あの子でしょ?柚の名前からかってきた男子」
「…何で分かったの?」
山に沈む太陽を見送った後、私と映美佳はあかねちゃんと別れた。
そのまま私達は家の方向に向かって歩き出した。
歩き始めると、話は自然に私の好きな人のことになった。
「だってさ、あんなに柚にからんでくる男子、久々に見たんだもん」
「でも、あの時は何も思ってなかった……」
「だろうね。時期は夏休み直前ってとこかな。あかねちゃんが、柚が授業中にボーッとしてたって言ってた辺り」
「映美佳、するどすぎだよ」
「言ったじゃん。何年柚の友達やってると思ってんのよ?」
少し暗くなり始めたから、映美佳の顔が見えにくい。
だけどたぶん、私よりも冷静な顔をしているんだろうな。
「名前、何て言うの?」
「え…、瀬川くん。瀬川拓」
「瀬川…ね」
「なんで名前なんて聞くの?」
「え?Y小の人なんでしょ?私の中にデータがないもん。同じクラスの子達にそれとなく聞いてみて、柚に合う人なのか確かめなきゃ」
「そこまでしなくても……」
「柚はさ、ボーッとしてるんだから、あっという間に男に騙されるよ?」
男に騙されるって!!
まだ私達、中1じゃん。。。