引っ込み思案な恋心。-1st
「もうすぐ体育祭です!そこで今日は、体育祭の出場種目を決めたいと思います!」
その日のホームルーム。
学級委員のあゆが壇上でハッキリとした声でみんなに話していた。
「一人2種目出場!!これは絶対だから!今、体育委員の二人に種目と人数を黒板に書いてもらってます。書き終わったら順番に読み上げていくので、出場したいと思った種目に手を挙げて下さい!!」
ええと……
リレーは足の遅い私は絶対出れない…いや、出てはいけない種目だし………
個人種目もほとんど足の速さを競うものばかりだし、出たくないな……
そう考えると、団体種目かな…
黒板に書かれた種目を見ながらブツブツ考えていると、男子の学級委員が種目を読み上げ始めた。
「じゃあ最初は学年別リレー!これは足が速い人が出るべきだと思うので、推薦でもOKです」
すると……
「はいはい!俺出てもいい!?」
隣から大きな声が聞こえてきて、私はびっくりして声のした方向を見た。
次の瞬間私の視界に映ったのは、大きく右手を挙げながら席を立っている瀬川くんだった。
「はい、瀬川ね。誰か異論のある人は………いないよな。瀬川はクラスで一番速いもんな。じゃあ瀬川って書いといて」
男子の学級委員はチョークを持っていた体育委員にそう頼んで、もう一度クラスを見回した。
「じゃあ、私出るよ」
次に手を挙げたのは、学級委員として壇上にいたあゆ。
「ああ、多田ね。確かに足速いよな。異論のある人ー?」
あゆはクラスを見回して、誰も手を挙げないのを見てニッコリした。
そして、自分で瀬川くんの下に名前を書いていった。
こんな風にして、次々とみんなの出場種目が決まっていった。