引っ込み思案な恋心。-1st
「とりあえず私、走ってみるから、ちょっと見といてー」
あかねちゃんは私に向かってそう言うと、スタートラインに駆け出した。
私はトラックの中からあかねちゃんを見守った。
あかねちゃんはさすがというか、やっぱりというか。
さっきまで息が切れ切れだったはずなのに、それを感じさせない華麗で機敏な身のこなしで、障害物をクリアしていく。
平均台も、本当に細い棒の上を走っているのかというくらい安定した走りでこなしていき、そのまま一気にゴール。
「どぉ?柚。…とりあえず走ってみなよ。それから練習していこー」
「うん」
私はあかねちゃんに言われた通りスタートラインに行き、ゆっくりと駆け出した。
…まずは前転。
マットはあるけど、土の上にそのまま置いてるから、土ぼこりが激しい。
ネットは、くぐっていたら前が見えなくなって、もたついてしまったのが自分でも分かった。
それからハードル。
体育の時間でもやったけど、結局私はマスターできなくて、この時も手前で何歩か歩いて帳尻合わせしてしまった。
そしてもう一つのハードルをくぐって、平均台。
この時点ですでに疲れ始めてるから、足元はフラフラ。
だから、3回目でようやく全部渡れた。
やっとゴールしたら、難しい顔をしたあかねちゃんがそこに立っていた。