引っ込み思案な恋心。-1st
「…柚、お疲れー」
「…あかねちゃん」
「これはかなり頑張らないと無理かなぁ〜」
…やっぱり。
自分でも、さっきのあかねちゃんの走りと比べると遅過ぎるって思ったもん。
「まー、まだ体育祭まで時間があるからさ、頑張ろ?それに、あゆも見てくれるって言ってたから」
「…あゆ?」
「うん。あゆはリレーと徒競争でしょー?リレーもバトン渡す練習するだけだから、結構ヒマだって言ってたよ」
「そうなんだ」
「あっ、今リレーの練習やってるみたいだねぇ」
あかねちゃんが指差す所を見ると、グラウンドの片隅でうちのクラスのリレーのメンバーがバトンの受け渡しの練習をしていた。
その中にはあゆと………、もちろん瀬川くんもいた。
あゆは最初のランナーで、瀬川くんがアンカーのようだった。
流れるように渡っていくバトン。
きれいに最後の瀬川くんまで回っていった。
「へぇ〜。この順番だと勝てそうな感じする。ねぇ、柚?」
「え…?うん」
うっかり瀬川くんの姿に見入ってしまっていた。
今は隣の席にいるけど、こんなに真面目な瀬川くん、そんなに見られないから…。