引っ込み思案な恋心。-1st









「杉田ぁ、網くぐる時、ちゃんと前見ろー」



「だーかーらー、ハードル跳ぶ時にちょこちょこ歩かない〜〜!!」



「柚!!平均台の前で一回立て直す!!気持ちを落ち着かせてから乗るんだよ!」






お、、、おそろしい……。





もう一度3人の前で障害物競争のコースを走ったら、みんな言いたい放題で私に向かって大声で叫び出した。





みんなの言うことは、頭では理解できるんだけど、身体の動きが全然言うこと聞いてくれない………。






ゴールすると、3人の怖い顔が私を迎えていた。





瞬間的に私は下を向いてしまった。





「あの…ごめん」





とりあえずそれしか言えない私に、最初に言葉をかけてくれたのは瀬川くんだった。





「まあだいたい杉田の走りが分かったからいいや。今から練習すりゃあいいんだから、気にすんなよ。一つ一つこなしていこーぜ」



「えっ…!?」






絶対キツイこと言われそうだと覚悟したのに、意外にも優しい言葉だったから、驚いて顔を上げた。





すると、瀬川くんも、あゆも、あかねちゃんも、穏やかな表情に変わっていた。





「そーそー。ついうちら口が出ちゃったけど、まだ練習1日目だし、これからだよぉ」



「私も一緒にやるからさ、頑張ろう!」



「…うん!!」





夕方とは言え、まだ残暑厳しいためか、生ぬるい風が頬をなでる。





だけど、みんなの爽やかな笑顔を見ていると、本当にできないことはないような気がしてきた。










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