引っ込み思案な恋心。-1st
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「……でさぁ、倉本が全然足合わせてくれなくて、すぐコケるんだよね。もうホントあり得ない」
それから何日か経った、ある休み時間。
ななっぺが後ろの席の瀬川くんに倉本くんのことを話していた。
「あー、アイツ、ああ見えてマイペースだからな。しっかし、マサと同じむかでのチームとは、ついてねーな、細井も」
「ついてなさすぎだって!あんなので他のクラスに勝てるわけないし!!」
最初は私と瀬川くんが話してて、後からななっぺが会話に加わってきたんだけど、気付くとななっぺが、むかで競争で同じチームらしい倉本くんの愚痴を暴走気味で吐きまくっていた。
そして、それをただただなだめるしかない瀬川くん。
「マサもテキトーにやり過ごすことしか考えてねえと思うぜ。それを上手く操縦するのが細井の役目ってとこだな」
「アイツは扱いづらすぎ!!」
ななっぺはそこまで言うと、大きくため息をついた。
「瀬川なら、倉本に何か言ってくれると期待したんだけど」
「残念だな。俺が言っても聞きやしねえって。普通に『お前むかでの選手じゃないだろ』で終わりそうだな」
「ああ、どうすればいいんだろ」
ななっぺが腕を組んで考え込んだところで、急に瀬川くんの顔が私の方に向いた。
「なあ、杉田はどう思う?」
「…え?私?」
「うん。細井みたいにただ怒って愚痴るだけじゃ、何も解決しないよな?」
「え……?」
瀬川くんの言葉を聞いたななっぺは、腕を組んだまま私の方を見てきた。
「えーーっと……」
なんか、今日のななっぺの表情、さっきまで愚痴ってたせいか、ちょっと怖いんだけど……。