引っ込み思案な恋心。-1st
「ね、何読んでんの?」
瀬川くんが、笑顔で私に聞いてくる。
他の男子も私の返事を待っているという感じだった。
「いや…」
何、これ?拷問?
たくさんの視線に耐えきれず、私はつい下を向いてしまった。
「…なんでも……ないよ」
蚊の鳴くような声で、それだけつぶやいた。
ハッキリ言って、質問の答えに答えていない。
そんなこと、分かってる。
だけど私は、この注目されている場から一刻も早く逃げたかった。
私はキョトンとする男子達を横目に本を閉じ、そのまま急ぎ足でトイレに向かった。