引っ込み思案な恋心。-1st





「ね、何読んでんの?」





瀬川くんが、笑顔で私に聞いてくる。





他の男子も私の返事を待っているという感じだった。





「いや…」







何、これ?拷問?





たくさんの視線に耐えきれず、私はつい下を向いてしまった。





「…なんでも……ないよ」





蚊の鳴くような声で、それだけつぶやいた。







ハッキリ言って、質問の答えに答えていない。





そんなこと、分かってる。





だけど私は、この注目されている場から一刻も早く逃げたかった。







私はキョトンとする男子達を横目に本を閉じ、そのまま急ぎ足でトイレに向かった。





< 13 / 243 >

この作品をシェア

pagetop