引っ込み思案な恋心。-1st
パン!!
空砲が鳴り響き、走者は一斉に走り出した。
最初は横一線だったけど、中盤に行くにつれて順位が決まっていく。
あゆは2位。
でも、1位からはそんなに離されていない、付かず離れずの所を走っていた。
そのままの位置を保ったまま、第2走者の所までやってきた。
第2走者の男子が、あゆの様子を見ながら右手を後ろにしてゆっくり走り出す。
あゆはバトンの受け渡しゾーンギリギリのところでバトンを次の走者の右手に叩き渡した。
……はずだった。
ところが次の瞬間、そのバトンが第2走者の男子の手からポロリと落ちた。
「あっ!!!」
うちのクラスのテント内に、嘆きにも似た声が上がった。
男子がバトンを拾っている間に、そんなに差が付いてなかった3位、4位の第2走者が次々と抜いて行く。
「やべーっ!一気に4位かよ!逆転できるか?」
そんな倉本くんの言葉すらかき消されそうになるくらい、うちのクラスのみならず他のクラスのテントも盛り上がっていた。
とりあえず4位のまま、うちのクラスの第2走者が走り始めた。
そのままアンカーの瀬川くんまで、うちのクラスは4位を保ち続けた。