引っ込み思案な恋心。-1st
「はあ…。私がシクったから2位になっちゃったね…」
閉会式が終わり、下校の時間になっても、あゆはさっきのバトンパスのミスを悔やんでいた。
「あゆ、元気出しなよー。瀬川が挽回してくれたんだしさぁ、良かったじゃん」
あかねちゃんは一生懸命あゆを励ましていた。
もちろん、ななっぺも。
「そうだよ。終わったことは忘れよ」
「せっかく応援してくれたのにごめんね…」
あゆは本気で落ち込んでいた。
そんなあゆを見てられなくて、私はあゆの肩に触れた。
「あゆ、私も同じだから。みんな応援してくれたのに、結果が残せなかった」
「…柚?」
「けど、みんなきっと怒ってないよ。私、ゴールした時に起こった拍手、嬉しかったから。みんな、『あゆ、お疲れ様』って思ってるよ」
「うん!私もむかではビリだったけど、みんなの応援でちゃんと完走できた。誰もあゆのことなんか恨んでないよ」
ななっぺも私に同調してくれた。
そう。
この体育祭がなければ、きっと私だってこうは思えなかったと思う。
みんなの心が一つになると、それはあったかいものになるんだって。
「…そうだね。ありがとう。気を取り直して帰ろうか」
あゆの表情が、一気に穏やかなものになった。
…よかった。
私の想い、あゆに届いたんだね。
こうして、中学に入って初めての体育祭は、幕を閉じた。
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