引っ込み思案な恋心。-1st
「あのさ、柚も正直に答えてくれたから、私も正直に言うけどさ……」
「うん……」
映美佳はすごく言いにくそうに腕を組んで少し黙り込んだ。
「…どうしたの、映美佳?」
「え、うん…。私から見た感じ、なんだけどね?」
「うん。何?」
映美佳の表情は、本当に私のことを心配しているように見えた。
そんな映美佳の顔を見て、私は少し、嫌な予感を感じ取った。
「……ななっぺさ、柚の好きな……、瀬川だっけ?…のことを、好きなんじゃないかな」
「えっ……!?」
今、何て言った?
「ごめん。コレさ、私の主観も入ってるかもしれない。けど、私は柚達と別のクラスだし、客観的に見てるつもりなんだけど…」
「あ、あのさ、…何でそう思うの?よく分かんないんだけど……」
ななっぺが、瀬川くんのことを好き?
そんなの、全然知らないし、聞いたこともないよ。
「教室を出る直前にさ、柚、瀬川に挨拶されたでしょ?その後、ななっぺが瀬川に声を掛けてきた」
「うん。それは私も見たよ?」
「正確にはさ、柚は瀬川の方しか見てないよ」
「え?」
「その時のななっぺの顔、見た?」
「あ…っ!」
確かに、私は教室のドアに向かう瀬川くんの方しか見てなかった。
ななっぺの声は確かに聞こえた。
でも、私は振り返らなかった。
「私は柚と向かい合わせて話してたから、後ろの方がよく見えたの。だから、ななっぺの顔もはっきり見えた」
「………」
ななっぺの表情…
ななっぺはどんな顔で瀬川くんに話し掛けていたんだろう…?
聞くのが、怖い。