引っ込み思案な恋心。-1st
「だから勉強会はやりたくなかった。柚と瀬川が仲良くしてるトコなんて、もう見たくなかったから」
……それが、真実……?
「10月に瀬川と隣の席になれて、嬉しかった。これはチャンスだと思ったから、私は精一杯の努力で瀬川に近付いたの」
「うん…」
「けど、瀬川は私のコト、ただのクラスメイトか友達にしか思ってない。それは雰囲気で何となく分かった。どうして私じゃダメなんだろう?瀬川の好きな人って?…って、そればっかり考えてた」
あれだけ男子に告白され続けてたのに、肝心の自分の好きな人は自分を好きになってくれない。
ななっぺの葛藤は大変なものだったと思う。
「そんな時、あかねちゃんから『ぶっちゃけトークしよう』って言われたの。それで瀬川が好きだって言ったら、まさか柚と瀬川が揃って聞いてたでしょ?信じられなくて……」
「ご、ごめん…」
「たまたま瀬川と一緒になっただけでしょ?柚が謝る必要ないよ。でもあの時、柚に当たっちゃいけないって分かってるのに多分ライバルだろうと思われる柚に、心の中で当たっちゃった」
「え……?」
教室の、ひんやりとした空気が私達の上に降り積もる。
冬の昼間は短くて、教室の中ももう薄暗くなり始めていた。
「あゆに大泣きしながら言ったんだ。『柚と話したくない』って。あの時あゆは笑顔でそれを許してくれた。今思えば、あゆは柚の気持ちも知ってて、私達がぶつかり合うことを避けるために賛成してくれたんだね」
「ななっぺ……」
そんなに辛かったなんて。
私の存在が、そんなにプレッシャーになっていたなんて。