引っ込み思案な恋心。-1st
せっかく瀬川くんが持ってきてくれたから、私はテーブルの上のお茶を一口飲んだ。
…ほんのり、あったかい。
もっと熱いのかと思ったけど、飲みやすい熱さに冷まされていて、思わず二口三口と飲んでしまった。
「…喉乾いてたんだな。ごめんな。この部屋やっぱ乾燥してんのかな?」
瀬川くんが部屋のエアコンのリモコンに手を伸ばそうとしていた。
けど、私もそろそろ帰らないとホントにヤバイ。
スクっと立ち上がり、ハンガーにかけてあったコートを取り、持ってきたバッグを持った。
「ありがとう。…私、そろそろ帰らないと」
「大丈夫か?無理すんなよ」
「うん。ホントに大丈夫。ごめんね、迷惑掛けて」
「あっ、俺送る」
「えっ!?」
うそ?
そんなつもり、全然なかったんだけど……
「外は真っ暗だぞ?それに杉田ん家、こっから遠いんだろ?さっき起きたばっかりってのもあるし……」
「でも……」
「遠慮すんなよ。また倒れても、暗いから誰も気付いてもらえないぞ」
本当に大丈夫なんだけど……。
でも瀬川くんの目は、いつになく心配…というか、真剣な色をしていた。
「ほら行くぞ。バッグ持つからコート着ろよ。外は寒いぞ」
「え!?あ……、うん…」
曖昧な私の返事なんて聞かないまま、瀬川くんは私の持っていたバッグを奪うように持ち、玄関先へ向かって行った。
私は慌ててコートを着て、瀬川くんについて行った。