引っ込み思案な恋心。-1st
「ごめん、ホントにまさか、こんなことになるなんて思わなくて……。瀬川くんにも迷惑かけちゃうし……」
本当に、この時間の外の世界は、すでに夜の暗さだった。
しかも、冷たい風が容赦なく私の顔に打ち付ける。
…コート着てても寒い……。
とにかく会話を探しながら、瀬川くんにさっきのことを謝ったけど、瀬川くんはさっきから何も話そうとしない。
普段、教室で男子達とふざけ合ったりしてあゆに注意されるほどうるさいのに、こんな時だけ静かになるなんて……。
ますますどうしたらいいのか分からないよ…。
学校から近い瀬川くんの家と、学校から1キロ以上ある私の家。
歩くと20分ほどの距離。
いつも、あかねちゃんや映美佳と帰る時は、楽しくしゃべりながらだから、家まであっという間に感じるのに、今日はトボトボ二人で帰るこの道が、遠いように感じた。
好きな人と二人きりで歩くなんてこと、はっきり言って初めてだから、舞い上がっててもおかしくないと思うのに……
私は、この重い空気に耐えられなくなりそうだった。
…しかも、話題が全然思い浮かばない。
5分ほど歩いたところで、急に瀬川くんが立ち止まった。
「あのさ、杉田……」
「え…!?」
私より少し前を歩いていた瀬川くんが、私を振り返るように口を開いた。
また、胸のドキドキが始まる。
「俺、杉田に言いたい事が……」
瀬川くんの視線が、真剣過ぎる。
けど、私は目をそらさなかった。
その目に、冷たさを一切感じなかったから。