引っ込み思案な恋心。-1st
「あ〜、瀬川だよ。うちのクラスのお騒がせ男子!」
「なんつー紹介してんだよ、馬場!!」
「…てかさー、何で瀬川がここにいるの?」
「俺も心配だから杉田送ってる途中だったんだよ」
瀬川くんとあかねちゃんの会話を聞きながら、映美佳は軽く何回か頷いたように見えた。
「私は、2組の小谷映美佳。柚とは小学校の時から友達なの」
「あ、ああ…。俺は瀬川拓」
「うん。瀬川のことはうちのクラスでも結構名前出てきてるから知ってる」
「は!?俺のこと???」
「はははっ!やっぱりお騒がせ男子じゃーん!」
あかねちゃんにからかわれて、瀬川くんは追いかけるような動作をしたけど、暗がりの中で姿がよく見えないせいか、途中で諦めていた。
「悪いウワサじゃないから、気にしないで。柚を送ってくれてありがとう。うちらの方が柚の家に近いから、こっからうちらが柚を連れて帰るよ」
「映美佳……」
やっぱり映美佳は私の親のように見えてしまう。
とても、同じ中1とは思えない……。
「柚!どうせまた宿題早めに済ませようと思って、徹夜で勉強してたんでしょ!?」
「え、えーーっと……、みんなに教えないといけないから、先に問題解いておいた方がいいかと思って……」
「もーーっ!そんなことしてるから逆にみんなに迷惑かけるんだよ!!」
「ご、ごめん、映美佳……」
そんな私と映美佳の会話を聞いた瀬川くんとあかねちゃんは、急に動きを止めて唖然としていたようだった。