引っ込み思案な恋心。-1st
そうか。
拓の場合、『クラス替えで今までの仲間と離れて辛い』じゃなくて、『クラス替えで新しい仲間に会えるのが楽しみ』って考え方なんだ。
今までそんな風に考えたこと、全然なかった…。
「ま、まだ1か月あるんだし、今の仲間を大事にしないとな」
「うん」
「寒くねぇ?ほら」
私の前に現れた、拓の手。
私はそっと、その手を握った。
「あ、あったかい…」
「だろ?俺の手は柚あっためるためにあるからな」
そんなこと言われると、また少し照れちゃうんだけど…。
手をつないだまま、二人でゆっくり歩きながら他愛もない話をした。
いつもなら、20分ほどで家に着くけれど、家に着いた時、拓の家を出てから30分ほど経っていた。
「早いなぁ。柚の家ってすげー遠いイメージだったけど、こうやって話してるとあっという間だな。もっと話していたかったのに」
「そうだね。ホントにあっという間……」
30分も経っていたとは思わないほど、楽しい時間だった。
けど、もう辺りは真っ暗。
そろそろ家に帰らなくちゃいけない。
「柚、いつも勉強教えてくれてありがとな。テスト、お互い頑張ろう」
「うん。頑張ろうね」
「じゃ、俺帰るから。また学校でな」
「うん、また……」