引っ込み思案な恋心。-1st
「おい、杉田」
私が教室を出ようとしたら、前からやってきた担任の宇野先生に呼び止められた。
「…はい」
「ちょっと話、できないか?」
宇野先生に手で教室にもう一度入るように促され、私はコクリとうなずき、それに従った。
誰もいなくなった教室で、私と宇野先生は机を動かし、向かい合わせになるように座った。
「みんな帰ってるのに、悪いな」
「いえ…」
一体何を言われるんだろう?
私、何か悪いことしたっけ?
「いやな、昨日、杉田の家に家庭訪問に行ったんだけどな」
そう。
なぜ今日、午前中で授業が終わるかというと、家庭訪問期間中だからなんだ。
いつもはジャージ姿の宇野先生も、ビシッとスーツを着こなしていて、何だかカッコよく見える。
宇野先生は暑いのか、スーツの上着を脱ぎながら話を始めた。