引っ込み思案な恋心。-1st
「杉田はこのクラス、慣れてきたか?」
「え…?」
「親御さんが心配されていてな。小学校の時もあまり友達がいなかったそうじゃないか」
「あ…はい」
「俺から見ててもあまり親しい子がいなさそうだったから、ちょっと不安になってな」
どうしよう……
私が一人でいることで、親や先生にも心配かけてるなんて……。
「俺はこのクラス、明るくて好きなんだけど、やっぱり一人でも面白くないヤツがいたら、そいつにも楽しい思いしてほしいと思うから」
私は何となく目線を下げ、机の上を見つめた。
「まあ、友達が全てじゃないけど…。もし楽しくないとか、いじめられてるとかあれば、遠慮なく俺に言えよ?」
あ…。
机の上で手を組んで話す宇野先生の手首を見て、私はあることに気が付いた。
「はい…。大丈夫です」
けど、宇野先生の言葉にも、今さっき気付いたことにも、私は口を出せないでいた。
ただ、この場を穏便に済ませようと思った。
先生だって、これから家庭訪問に出発しなきゃいけないのに、私の話を聞いてもらう時間なんてないよね…?
「そっか。無理するなよ。杉田はマイペースで大丈夫だから」
そう言いながら、宇野先生は席を立った。
すると、私が気になっていた、先生の手首から……。