引っ込み思案な恋心。-1st
「あの……、私、ボタン付けましょうか…?」
「え?大丈夫なのか?」
「えっと、急ぎますよね?」
「無理ならいいぞ?職員室にいる女の先生に頼むから」
「いえ、大丈夫です」
私は側に置いてあったカバンの中から小さなソーイングセットを取り出して、その中から白い糸と針を手に持った。
「へえ……。なんか、杉田って女子らしいなあ」
私はそんな宇野先生には反応しないで、差し出された左手首に集中する。
ボタンを指で押さえながら、糸の通された針をボタンのあった場所に通していく。
その後も宇野先生は色々感嘆しながら独り言を言っていたようだけど、集中していた私の耳にはあまり入っていなかった。
「…できました」
小さいハサミで糸を切り、私は先生の顔を見上げた。
「おおっ!しかもちゃんと補強されてる!サンキューな、杉田!!」
先生は自分でボタンの状況を確認して、とても感心した笑顔で私を見てきた。