引っ込み思案な恋心。-1st
「は、はい……」
「いや、ソーイングセット持ち歩いてる女子ってすごいよ。今日は杉田のいいところが知れてよかった」
「はぁ」
こんな嬉しそうな顔をされると、こっちの方が照れてしまう。
「こんなところ、もっとみんなが分かってくれるといいのにな」
「………はい」
どういう顔をしていいか分からなくなって、私は下を向いた。
「じゃあ俺は家庭訪問に出発する時間があるから。また明日な、杉田」
「はい。…さようなら」
「ああ、さようなら。気を付けて帰れよ。杉田ん家、遠いんだから」
笑顔の先生を見ると、やっぱりあの時言って良かったと思った。
ボタンが取れかけていることを言った時は、少し勇気がいったけど……
『付けましょうか?』と言った時は、完全に無我夢中だった。
でもきっと、これで良かったんだよね。
だけど、相手が担任の先生だし。
友達づくりには程遠いけど、誰かに認められただけでも……私、進歩できたよね。
私も少し嬉しい気持ちになって、机を直してカバンを持ち、教室を出ようとした。
その時……。