引っ込み思案な恋心。-1st
「良かったぁ〜。まだ教室に杉田さん残ってて」
「うん……」
「ごめんねー、迷惑だった?」
「ううん。そんなこと、ないよ」
「そっかぁ。なんかうちら、同じ小学校なのに全然話したことなかったよねー」
いきなり話しかけられて、私はどうしたらいいのか分からなかった。
ただ、馬場さんからの言葉に返事をするのが精一杯。
だけどそんな私の様子を知ってか知らずか、馬場さんは楽しそうな表情で私に色々話し掛けてきた。
「杉田さんって、音楽得意でしょー?いっつもリコーダーのテスト、イチ抜けしてるじゃん」
「ううん、普通だよ…」
馬場さんの、妙にスピード感ある話に圧倒されながら、私は愛想笑いを浮かべた。
なんか、こういうの、苦手。
どう対応したらいいんだろう?
私、変に思われてないかな…?
「今日もリコーダーのテスト、あったよねぇ?ね、もし杉田さんイチ抜けしたら、私に教えてくれない?いいでしょー?」
…なんか、断る余地なんてどこにもなさそうな感じ。
「うん…、いいよ」
私はただ、うなずくしかなかった。