引っ込み思案な恋心。-1st
「今日もリコーダーのテストをします!各自練習をして、完璧にできそうだと思ったら、先生のところに来て下さい」
うちのクラスの音楽担当は、若い女の先生。
まだ、教師になって2年目…とか言ってたっけ。
「えー!?…っつうか先生!俺、リコーダー忘れましたぁ〜」
いつも通り、瀬川くんが大声で先生につっかかってる。
周りのみんなもクスクス笑い出して、テスト前の暗い雰囲気は、一気に明るくなった。
「瀬川くん、また忘れたの〜?じゃあ、このリコーダー使って。ここにあるアルコールでちゃんと拭いてね」
先生はやれやれという感じにため息をつきながら、音楽室で所有しているアルトのリコーダーを出してきた。
「他に忘れた人はいないわね?じゃあみんな、練習を始めて下さい」
ピー、プー、ポー…と、不協和音のリコーダーの音色が一気に音楽室に響き渡る。
10分ほどすると、先生の元にはちらほらと行列ができ始めた。
私もそろそろ完璧に吹けそうな気がしたので、その列に並んだ。
私が並んでいる途中に、何人かが合格していった。
そして、ついに私の番……。
「えっと、次は杉田さんね。じゃあ、演奏を始めて下さい」
先生は名簿を確認しながら優しくそう言った。
「はい」
私は小さく返事をして、リコーダーを口にくわえ、息を吹きかけた。