引っ込み思案な恋心。-1st
「柚の説明、すっごく分かりやすかったー。これで期末乗り切れるかも」
数時間後。
勉強会が終わり、みんなは教科書を片付けたり、伸びをしたり、麦茶を飲んだりしてのんびりし始めた。
「そんなことないよ。みんなが私の言おうとすることちゃんと補足してくれるから…」
あかねちゃんの言葉に照れた私は、目の前にあった麦茶を一口飲んだ。
「いや、バカな俺にも分かったし!杉田やっぱりすげーな」
ポテトチップスをパリパリ食べ始めた瀬川くんは、私に感心した視線を送ってきた。
けど。
「やっぱ友達いないと、すること勉強しかないってことだろ」
ポツリとそう言ったのは、倉本くん。
もちろんその場にいた全員がその言葉を聞き逃すはずがなかった。
「倉本!!アンタ柚に謝りなさいよ!」
最初に大声を出したのは、あゆ。
「そーよ!倉本だって柚に教えてもらって『分かった』って言ってたじゃん!!」
続いたのは、ななっぺ。
けど、倉本くんは表情を変えることなく淡々と言葉を続けた。
「なんだよ。お前らだって、勉強教えてもらうために杉田と仲良くなったんだろ?そう考えると、それまで杉田無視してたのにいきなり手を返したのも納得いくし」
「違うよ!!ほら、柚も何かいいなよ。こんなボロクソ言われてるのに、悔しくないの?」
あかねちゃんに促されたけど、私は何も言えずに下を向いていた。
実際友達がいない時に、読書や勉強しかしなかったのは事実だから。