引っ込み思案な恋心。-1st
「……分かってないのはお前だよ、マサ」
みんな私の言葉を待っていたと思うけど、部屋に響いたのは、瀬川くんの言葉だった。
すると、マサと呼ばれた倉本くんは、瀬川くんに驚きの視線を向けた。
「…は?拓だって杉田に勉強教えてほしいから近付いたんじゃねーのかよ?」
「ちょっと待って!それは違う!!」
倉本くんの言葉を否定したのは、瀬川くんではなくあかねちゃんだった。
「瀬川はハッキリ言ってた。柚と話してみたかったんだって。確かに私、最初は柚のこと利用してたかもしれない。けど、私は柚に救われたから!!柚はちょっと人づきあいが不器用なだけだよ!」
あかねちゃんの勢いに圧倒された倉本くんは、少し後ずさりしたように見えた。
「な、なんだよ。そんな熱くなることねーだろ」
「馬場の言う通りだから」
焦った倉本くんに追い打ちをかけたのは、瀬川くんだった。
「マサ。お前、俺が毎日杉田に話し掛けてたの、何でだか分かる?」
「え?からかってただけだろ?」
「お前、俺よりバカ???」
「は?」
すると瀬川くんはため息をつくように息をふうっと吐いて、こう続けた。
「マサの中の杉田のイメージって、『しゃべらない奴』ってトコだろうと思うけど、しゃべらなかったらもうそれでソイツのいい所や悪い所が分かんなくなるだろ?俺、そんなの嫌だし。せっかくクラスメートになるなら、一人一人がどういう奴か、ちゃんと知った上で話がしたい」
「そんなの、しゃべらない奴が悪いんじゃん」
「フツーの奴ならそう思うだろうな。けど、杉田はしゃべりたくてもしゃべれない。そういう性格だから。俺も諦めかけたんだけどな、ある日、杉田のいい所を偶然目撃したんだよ」
「え…?」
倉本くんだけでなく、あゆ、ななっぺ、あかねちゃんも瀬川くんに注目した。
私も記憶をたどったけど、瀬川くんにいい所なんて見せた覚えが全くなかった。