引っ込み思案な恋心。-1st
「ごめん、柚!!日焼け止め忘れたから貸してくれない!?」
着替えを終えたあかねちゃんは、私の返事を聞く前に日焼け止めを手に出していた。
それに気付いたのは、ななっぺ。
「あ!あかねちゃん、無断で日焼け止め使ってんじゃん!!」
「いや、ちょっとだけだから〜」
あかねちゃんは少し焦りながら苦笑いをした。
けど、今度はあゆがあかねちゃんに言った。
「『貸してくれない!?』って、返せないでしょ?」
「だからぁ、今度柚が忘れた時に、…ね?」
「柚はしっかりしてんだから、忘れるわけないじゃん」
このままじゃ堂々巡りなので、私も会話の中に入った。
「大丈夫だよ。この日焼け止め、買ったばかりだからたくさん入ってるし」
すると、あゆの真剣な顔が私の方に向いてきた。
「ダメ、柚!!みんなに甘い顔してると、ホントに誰かに利用されるよ!友達なんだからビシッと言わないと!!」
うっ…!
それはその通りなんだけど……。
「…じゃあ、忘れた時は前もって言ってね」
あゆ、結構鋭いことをたまに言うんだよね。
しかも、本当のことだから、何も言い返せない……。
「うん。とりあえず解決だね。もうすぐ授業始まるから、早くグラウンド行こう!」
すっかりきれいに日焼け止めを塗り終えたななっぺが時計を指差していて、その方向を見上げると、次の授業が始まるギリギリの時刻を指していた。