引っ込み思案な恋心。-1st
「あ、瀬川くん。ありがと……」
私がそうお礼を告げると、瀬川くんは一瞬下を向いたけど、次の瞬間大きな声でこう言った。
「ハードル係は男子なー。女子は撤収!」
すると、そんな瀬川くんの声を聞いたあゆは、ゆっくりと自分の持っていたハードルを置いた。
「瀬川、たまには気が利くこと言うじゃん」
あゆがそう言うと、一緒に来ていたあかねちゃんとななっぺも同調した。
「そーだね。じゃあ女子はお言葉に甘えちゃおーよ」
「うん。柚も行こう?」
私はななっぺに背中を押されて、再び熱気が立ち上るグラウンドへ駆け出して行った。
まだ午前中なのに、もう太陽が真上にある気がする。
日焼け止めをバッチリ塗ったはずなのに、肌がジリジリ焦げているような気分。
こんなに暑いはずなのに、私の心は穏やかだった。
期末テストの勉強会の時、私は瀬川くんの気持ちを知った。
「私と話してみたい」と言った、本当の理由――。
こんな大人しくて引っ込み思案で、話し掛けてもどう返していいのか分からない私に諦めずに話し掛けてくれたのは……
誰にも見つかることがないと思っていた私のいい所まで見つめてくれてたからなんだ。
あの時から、何となく瀬川くんのことが気になってる。
こんな人、男女問わず探しても、なかなかいないと思うから。
しかもさっき、優しい一面まで見ちゃったし。