引っ込み思案な恋心。-1st
「ゆーーーずっ!話ちゃんと聞いてた!?」
あゆの少し怒ったような声が聞こえてきて、私は我に返った。
「え…?ごめん、もう一回言ってもらえるかな?」
そう言うと、あゆは腰に手を当ててため息をついた。
「もう、柚はたまにボーっとしてるとこあるんだから。あのね、ハードル走は跳ぶ足が決まってるでしょ?だからハードルとハードルの間を何歩で進むか決めとかないといけないんだよ」
「ああ…そうだね」
「いい加減に走ってると、ハードルの手前で帳尻合わせしないといけなくなるから、スピードが上手く出ないんだって」
「…なるほど」
私が頷くと、ななっぺが私の肩に手を乗せてきた。
「とりあえずやってみないと分かんないよね。男子がハードル並べ終わったら、やってみようよ」
穏やかな口調でそう言ったななっぺに、私も笑顔で頷いた。
「うん!!」
そんな私を見ていたあゆは、安心したような表情になった。
「よーし、決まり!あかねちゃん、先に行って順番取っておこうよ」
そして、あゆはあかねちゃんと一緒にハードルのスタートラインの方へ走っていった。