引っ込み思案な恋心。-1st
「しっかしさぁ、あゆとあかねちゃんって、体育の授業になると生き生きしてるよね」
残されたななっぺと私は、ゆっくりとあゆとあかねちゃんの駆けて行った方向に向けて歩き出した。
「うん。二人とも体育得意だもんね」
そう。
あゆとあかねちゃんの得意科目は、体育。
特にあゆは女子バスケ部に入ってるから、球技の授業になると率先してリーダーをやっている。
「柚は勉強できるでしょ?私は特にこれといって何もないもんなぁ」
ななっぺは真っ青な空に向かって小さなため息をついた。
「でもななっぺは合唱部でしょ?歌が上手いよね」
「えー?入った時は完全にシロウトだったから、まだ3か月ぐらいだし、成長途上だよ。やっぱり特技があった方が注目してもらえるのかな……?」
特技なんてなくても、ななっぺはクラスの女子の中でも群を抜いてかわいい方だと思う。
あゆから聞いた話では、小学校の時からかなり男子に告白されているらしい。
初めて見た印象からモテるだろうな…とは思っていたけど、そこまでモテていたとは。
なのにななっぺは断り続けて、今も彼氏はいないらしい。
だから、今更『注目してもらいたい』なんてななっぺの言葉に、少しだけ違和感を感じた。
そんな時……
急にななっぺが私の左手を引っ張ってきた。
「もうみんな並び始めてる!!せっかくあゆとあかねちゃんが順番取ってくれたのに、早く行かなくちゃ!!」
いきなり引っ張られて、少し転びそうになったけど、私はななっぺに連れられてあゆとあかねちゃんの待っているスタートラインに駆け出した。