引っ込み思案な恋心。-1st
「ゆずぅーー。ハードルの手前で小刻みに何歩歩いてんのぉ?」
私が50mのハードル走を終えてあゆ達の待っていたところに行くと、あゆがため息交じりに私に話し掛けてきた。
「だって、何かタイミングが合わないんだもん…」
「だから言ったじゃん。何歩走るか決めておくって。あとは勢いで跳ぶって感じかな」
あゆがそうアドバイスをしてくれた。
けど、勢いで跳ぶとか無理なんだけど……。
すると今度は、あかねちゃんがアドバイスをくれた。
「別にさー、ハードル倒してもペナルティはないんだから。走ったまま勢いよく、転んでもいい覚悟で跳ばなきゃ」
転んでもいいって、転びたくないし…。
「あっ、今転びたくないって思ったでしょ?」
ギクッ!!
ちょっと表情変えただけで、あゆには私の気持ちがすぐ分かってしまう……。
「転んでも私がおぶって保健室連れていくから、大丈夫大丈夫!!」
あゆは豪快に笑っていた。
けど、私はまた走るのが嫌で、あゆ達にバレないようにため息をついた。
すると、同じように笑っていたあかねちゃんが、スタートラインの方を指差した。
「あっ!いい例が次走るみたいだから、見ときなよ」
「いい例……?」