おしゃべりな百合の花
 見かねた店員が、


「お客様!」


 と叫びながら近寄り、美百合の腕をそっと掴んで制止する。


「触らないで!」


 美百合は店員に向かって叫ぶように言うと、腕を激しく動かしながら店員を振り払い、龍一に向かって全力で罵った。


「そうよ、私は誰とでもセックスするアバズレよ。でもあんたとだけは、死んでも絶対しない。女を、欲求不満解消の道具としか思ってない下衆野郎。」


 目に涙を溜めながら、必死で思ってもいないことを口走る美百合に、龍一の心が痛んだ。


 それでも目的は果たせたと、自分に言い聞かせるしかなかった。


 数秒龍一を睨み付けると、美百合の右目から、雫が一滴零れ落ちた。


 それを隠すように顔を逸らして向きを変え、手で雫を拭いながら走って店の出口へ向かった。


 夜道は危険だ。


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