おしゃべりな百合の花
 それは、あの悪徳弁護士、迫田博文が、またしても完全なる黒を白にしたという裁判の記事。


 彼が雇われている、『尾藤グループ』の社長のバカ息子が婦女暴行で訴えられた事件。


 尾藤グループとは、表向きは、不動産、レジャー開発を手がけている大手企業、だが実際は暴力団とやっていることはなんら変わりない。


 何でも、女性が露出の激しい服装をして被告を誘っただの、誘惑するような発言や態度があっただのと無茶苦茶な言い分で、女性の方にも落ち度があったと無罪を主張したらしい。


 それがまかり通るから、この世の中恐ろしい。


 このバカ息子の狙撃命令が出ないものかと考えなら、龍一がつい先程読んだばかりの記事だった。


 とはいえ、婦女暴行ごときで、政府の暗殺指令が下される筈も無く、龍一は一人、舌打ちしたのだった。


 いや、ちょっと待て。


 そんな事より、この記事と美百合にどんな関係が?


 龍一が不思議そうにオーナーを見上げると、


「美百合ちゃん…その弁護士の一人娘よ。」


 オーナーは、言い難そうに答えた。


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