おしゃべりな百合の花
　龍一が食事を終えて暫くした頃、閉店時間は数時間後だというのに、私服に着替えた美百合が、龍一の元へやって来た。


「奥さんが、もう上がっていいって。」


　嬉しそうに微笑む美百合を、龍一は眩し過ぎて直視できなかった。


　レジで会計を済ませると、美百合と共に店を出た。


　途中、美百合が喉が乾いたと言い出し、龍一は自販機でジュースを買わされた。


　背後にけたたましい車のブレーキ音を聞き、龍一が振り向くと、美百合の背後に漆黒のワンボックスカーが停まっており、黒ずくめの男が二人、助手席と、後部座席からそれぞれ降りようとしていた。


　慌てて美百合に走り寄り、美百合を少し後方へ押しのけ、その男達と美百合の間に立ちはだかる。


　それでも、目的を達成しようと、男の一人が上着の胸ポケットから銃を抜き、龍一に銃口を向けようとした。


　男が狙いを定める前に、龍一は素早く腰のホルスターからハンドガンを抜き、咄嗟にその男の額を撃ち抜いた。


　背後で美百合が、小さな悲鳴をあげた。


　幸い通行人はいない。


　だが任務以外の殺しは厳重注意。


　チッと舌打ちしつつも、銃をホルスターに戻すと、仲間の死に怯え、慌てて後部座席に逃げ込もうとする男の背中を掴んで、引き摺り下ろしながら、スライドドアを思い切り閉めて、その男の右腕を潰さんばかりに挟んだ。

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