おしゃべりな百合の花
Mon.
 午前7時30分。


 龍一は、住んでいるマンション近くの喫茶店へ行くのを日課としている。


 オープンカフェが隣接している、ガラス張りの洒落た店。


 店内外に観葉植物か、うるさくない程度に飾られ、BGMは静かなクラシックと、新聞を読みながらゆったりと朝食を済ますには、もってこいの店だった。


 今日も龍一は、その店の店内の、もはや朝は龍一の指定席となっている奥の席に腰掛けた。


 すでに顔馴染みとなっているウエイトレスが、お絞りと水、そして本日の新聞朝刊を持って現れ、龍一の目の前にそれを並べた。


 ウエイトレスが龍一に向かって微笑むと、龍一は微笑み返すこともせず無表情のまま、


「いつもの」


 と無愛想に呟いた。


「はい」


 それでもウエイトレスは嬉しそうに返事をし、厨房に戻って行った。


 彼女に好意を持たれていることに、龍一は薄々気付いていた。


 店を変えることも何度か考えた。


 が、これほど龍一の欲求を満たしてくれる店は、この辺りでは、ここ以上、もしくは同等の店は存在しない。


 しぶしぶ素っ気無い態度で、何とか彼女と一定の距離を保つことに尽力した。


 だがそんな龍一の努力空しく、その日彼女は大胆行為に出る。


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