おしゃべりな百合の花
「放してよ…」


 弱々しく、もう一度、美百合は言った。


「できない。」


 龍一は、そう言うと、美百合の横髪に顔を埋めた。


 美百合は逆らう事ができず、しばらくじっとしていたが、やがて、


「家に帰りたい。」


 小さな声で、許しを乞うように言った。


 龍一のことが怖かった。


 簡単に人を殺した龍一が。


 当たり前のように銃を所持していた龍一が。


 人の命を奪うのは、これが初めてではないことは、明らかだった。


 一刻も早く家に帰って、龍一と離れたかった。


 すべて終わりにしたかった。

< 53 / 85 >

この作品をシェア

pagetop